【無償サンプル】商品を無償で提供した時の会計処理について【見本品・見本費】

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無償サンプルとは

無償サンプルとは新規開拓、取引拡大のために無料で配る商品のことです。

コロナ禍になる前はスーパーの生鮮食品売り場とかで試食をやっていましたけど、あれも無償サンプルです。

仕入する側にとって無料でお試しできたら便利ですよね。

販売する側としても、無料で配付するのはコストが掛かりますが

新たな販売先が見つかって安定した売り上げにつながれば嬉しいですよね。

無償サンプルの提供はビジネスでは一般的に行われています。

無償サンプルの会計処理

一言で無償サンプルといっても仕入側、販売側で処理が異なります。

自分が商社の営業担当者と仮定してみて考えてみましょう

取引の流れとしては、仕入先→自分→売上先となります。

わかりやすくするために、無償であっても仕入先、売上先という表現にします。

以下①、②、③のパターンの物の流れは所謂直送取引で、仕入先→売上先を前提とします。

①仕入先から無償でもらい無償で渡すパターン(無償・無償)

このパターンが一番よく見られます。

売上先が気に入ったら取引開始となります。

【仕訳】
   なし

経済的には実態がないので無償サンプル自体の仕訳は発生しません。

配送費については、負担者を適宜決めて支払うことになります。

仕入先から売上先に直接送付することが多いので、仕入先が負担することが多いです。

②仕入先から無償でもらい売上先に有償で販売するパターン(無償・有償)

こんなパターンもたまにあります。

売上原価はないので売上がそのまま利益になります。

そんなんずるくね?と思いますよね。私もそう思います。

【仕訳】
売掛金 ×× / 売上 ××

③仕入先から有償で購入し売上先に無償で渡す(有償・無償)

仕入先が強い場合などはこのパターンもあります。

商社主導で新たな販売経路を開拓しているときに見られます。

商社が将来の利益獲得のためにコストを負担する場合ですね。

【仕訳】
見本費 ×× / 現預金 ××

月をまたぐ場合は一度未払金で計上してから支払うことがほとんどです。

一度在庫する場合の経理処理

すぐに渡さずに一旦在庫となる場合は、ちょっとだけ処理が異なります。

①無償・無償

【仕訳】
   なし

無償無償の場合仕訳はやはりないですが、商品そのものの価値が高い場合は0円の在庫として認識します。

会計システムや業務システムでは、金額は0円で数量10みたいにできることが多いので登録できる場合は登録しておきましょう。

実地棚卸や帳簿棚卸の際に差異として出てくることを防ぐためでもあります。

ただでもらったものとはいえ、その物自体に価値はありますのでデータ上は可視化できるようにしておいた方が内部統制的にいいと考えられます。

但し、金額的価値が合計で100円とか低い場合は処理を省略してもよいでしょう。

②無償・有償

【仕訳】
 入庫時 なし
 出庫時 売掛金 ×× / 売上 ××

このパターンにおいても①とおなじように出庫するまでは0円在庫として登録しておきましょう。

出庫時は売上計上を行います。その際0円在庫を減らすのを忘れないようにしましょう。

③有償・無償

【仕訳】
 入庫時 商品 ×× / 買掛金 ××
 出庫時 見本費 ×× / 商品 ××

入庫時は通常の取引と同じように在庫計上を行います。

出庫するまでは商品勘定に置いておき、出庫時に見本費に振り替えられることになります。

海外から取り寄せる無償サンプル

海外から輸入する無償サンプルについて、インボイス価格は無償のため0円ですが、

輸入申告上は通常の商品とおなじように基本的に関税が掛かります。

ただし、見本に供することが明らかであるもの、著しく価額が低いもの(5,000円以下 ※酒類を除く)については関税の免除を受けることができます。

無駄に関税を負担することにならないよう確認することを推奨します。

海外から見本を送ってもらう際の免税手続き:日本
【質問】
注文取りのため、海外から見本を送ってもらいます。この場合の免税手続きについて教えてください。
【回答】
注文取り集めのための見本で、見本用にのみ適するもの、または著しく価額の低いか、輸入後に、無償で配布されることが明らかである ものについては関税の免除を受けることができます(関税定率法第14条第6号)。
I. 注文取り集めのための見本
すでに生産されている特定の種類の貨物を代表する物品または生産が計画されているものを示す物品で、これらの市場需要傾向などの調査のために輸入されるものとされています。見本であることを示すラベル等も見本のための物品の一部とみなされます。
見本のための物品は、輸入時のインボイス、または貨物の種類、性質もしくは形状によって判断されますが、原則として以下のものが該当します。

1.見本用にのみ適するもの

A. 特定の長さに切断したもの、またはシート、スラブその他これらに類する形状にしたものであって、見本用以外には使用できない寸法のもの:

   一部記載省略

2.著しく価額の低いもの

次のもので、課税価格の総額が5,000円以下のもの(酒類は除く):

a. 見本のマークが付き、またその他の処置(試供品の表示等)を施したことにより、通常見本用に供すると認められる物品

b. 見本の表示はないが、通常見本用に供すると認められる程度の量に包装した物品、または1個あるいは1包装の課税価格が1,000円以下の物品

なお、見本としての免税に該当するかどうか判断が難しい場合は、輸入前に「税関相談官制度(カスタムスアンサー)」より各税関に確認することを推奨します。

JETRO HPより https://www.jetro.go.jp/world/qa/04H-100315.html

場合によっては交際費、寄付金の指摘を受ける可能性あり

不特定多数の者に対し、宣伝してもらいたい商品をサンプルとし無償提供していれば見本費となりますが、

特定の者にお礼、お返し的な意味で無償提供するのであれば接待交際費や寄付金で処理する必要があります。

あまりにも高額なものの無償提供や、特定の者に対する御礼的意味合いがある場合は交際費、寄付金で処理すべき可能性がありますので要注意です。

基本的に販売促進、新規開拓、販路拡大のために無償サンプルの提供は行われるものですので、

プレゼントのような性質があると客観的にとらえられるようなものは税務上指摘を受けるかもしれません。

なんでもかんでも無闇に見本費で計上をしないように気をつけましょう。

無償サンプルを受け取る場合も注意です。性質によっては受贈益等で収益計上しなければならない可能性もあるので取り扱いには注意しましょう。

最後に

無償サンプルの経理処理について記載させていただきました。

販売促進に供される見本品ですが、内容によっては税務調整が必要になりますので意外と奥が深いものです。

0円での在庫計上は会計上の重要度はひくいですが、適切な在庫管理上は望ましい処理ですので会社の方針に従い対応しましょう。

うい(筆者)

この記事が皆さまの参考になれば嬉しいです。最後まで御覧いただきありがとうございました。

この記事を書いた人

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●経理歴15年●商社勤務
●資格:簿記論、財務諸表論、簿記1級、AFP、TOEIC750、ビジ法2級

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