クラウドの経理処理について【初期費用・勘定科目・会計処理・税務・資産計上】

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この記事でわかること

  • クラウドの概要
  • クラウドの会計処理
  • クラウドの税務処理
目次

クラウドとは

経理処理のまえに、クラウドの概要をざっくりおさえておきましょう。

クラウドとは、ざっくりいうと「ユーザーがサーバーやソフトウェアを持たずに、インターネットを通じてサービスを利用できる形態のこと」です。

身近なところでいうと、AppleのiCound(アイクラウド)が有名ですね。

Iphoneの写真やらデータのバックアップができるクラウドサービスです。

クラウドサービスが世の中に登場するまではハードウェアを購入したり、

ソフトウェアを購入しパソコンにインストールしなければ、各種サービスを使うことはできませんでしたが

クラウドサービスの普及により容易にサービスを利用することが可能となりました。

クラウド(cloud)は直訳で「雲」という意味ですが、

雲の中にあるコンピューターシステムを地上から利用しているようなイメージで捉えていただければOKです。

クラウド登場以前は、サービス利用者は自分のPC内のソフトウェアやデータを利用していましたが、

クラウドではネットを経由して、雲の中にある(ような)ネットワーク上のソフトウェアやデータを利用していることになります。

ちなみクラウドという用語は、ネットワークをイメージする図版で雲をよく使うことからきた表現で、2006年にグーグル社 CEOエリック・シュミット氏が初めて使ったとのことです。

うい(筆者)

GoogleのGmailもクラウドサービスです。
インストールせずに使えますよね。

クラウドの種類について

クラウドはIaaS・PaaS・SaaSの3つに分類されます。

うい(筆者)

内容を知っておくと経理処理する際にイメージしやすいのでざっくりおさえておきましょう。

IaaS(Infrastructure as a Service)イアース

ネットワークやデータセンターなどのインフラ環境を提供するクラウドサービスです。

PaaS(Platform as a Service)パース

データベースやユーザー・インターフェースなどアプリケーションを利用するための基盤や開発環境などを提供するクラウドサービスです。

SaaS(Software as a Service)サース

メールやスケジュール管理をはじめ、ソフトウェア、アプリケーションサービスを提供するクラウドサービスです。

私たち一般消費者が利用するのは主にこのSaaSです。iCloudやGmailはこのSaaSに分類されます。

うい(筆者)

インフラ、プラットホーム、ソフトウェアのクラウドサービスがあるということですね。

クラウドの会計処理

クラウド利用料の仕訳

クラウド利用者はソフトウェアを購入するわけではなく,クラウドによって提供される「サービス」を購入していると考えられます。

クラウドサービスの利用料にはサービスだけではなく、システム運用の保守費用なども含まれていることが一般的です。

クラウドサービスに支払った代金については、支払手数料や通信費等の勘定科目により計上します。

うい(筆者)

SaaSは通常、月額いくらという契約です。利用料を費用処理するだけなので単純ですよね。

仕訳

借方 支払手数料 / 貸方 現預金

使用する勘定科目は明確なルールはありませんので、通信費等でもOKです。

但し、継続性の観点から毎期同じ勘定科目で計上しましょう。

初期費用、カスタマイズ費用の仕訳

クラウド導入に掛かる初期費用、カスタマイズ費用については、一般的に資産計上します。

仕訳

借方 ソフトウェア / 貸方 現預金

「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」によると、下記の取り扱いとなっております。

資産計上することとなる自社利用のソフトウェアの取扱い

11.自社利用のソフトウェアの資産計上の検討に際しては、そのソフトウェアの利用により将来の収益獲得又は費用削減が確実であることが認められるという要件が満たされているか否かを判断する必要がある。

その結果、将来の収益獲得又は費用削減が確実と認められる場合は無形固定資産に計上し、確実であると認められない場合又は確実であるかどうか不明な場合には、費用処理する。

ソフトウェアの導入費用の取扱い

(購入ソフトウェアの設定等に係る費用の会計処理)

38.完成品のソフトウェアを購入して利用するまでには、ソフトウェアの導入に係る費用やソフトウェアを利用する環境を整えるための費用が発生するが、これらの費用に関する会計処理については、以下のように考える。

完成品のソフトウェアを購入し、社内で利用する場合には、大きく分けると次の2つがある。

(1) 購入ソフトウェアをそのまま導入する場合

完成したパッケージソフトウェアをそのまま導入するケースで、追加の作業は簡単な導入作業程度である。

(2) 購入ソフトウェアの設定等が必要になるケース

完成したソフトウェアを購入する場合でも、例えば、財務会計ソフトの科目マスターの設定のように設定作業が必要となる場合、あるいは自社の仕様に合わせて画面や帳票などを修正する場合などがある。

これらの作業は、自社で行う場合と外部委託する場合がある。

購入したソフトウェアをそのまま導入する場合、例えばワープロソフトのようなビジネスソフトなどを購入するような場合には、導入費用は一般的にはほとんど発生しないと考えられる。

外部から購入したパッケージソフトウェアに対して設定作業又は自社の仕様に合わせるための付随的な修正作業等の費用は、購入したソフトウェアを使用するために不可欠な費用であり、有形固定資産の取得に要する付随費用と同様に、ソフトウェアの取得価額に含めるべきである。

「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」

一瞬、ん?と感じた方もいるかもしれません、

これってソフトウェアのことを言ってるから、クラウドとは違うんじゃないの?と思いますよね。

実はクラウドに関する会計基準は存在しない(当記事執筆時点)ため、仕方なく近しいソフトウェアに関する基準をかわりに使っています。

購入してインストールするソフトウェアと違い、

クラウドは自分の手元にソフトウェアがなく雲の中にあるものを利用しているだけですので、

資産計上というとはじめは違和感がありますよね。

うい(筆者)

これが混乱する原因かと思います。早くクラウドの会計基準を作って欲しいです。テクノロジーの発達が早く、追い付かないんですかね。


利用料だけのSaaSと違い、IaaS、PaaSは一般的に初期費用が高額になります。

私の会社でも数年前に自社サーバーからクラウドに移行しましたが初期導入費用に数千万円掛かりました。(!)

さすがに数千万円を一発で費用計上って躊躇しますよね。

費用収益対応的にも、支出した会計期間にすべて帰属するかとなると、そんなことないと思いますし。

なお、耐用年数は他のソフトウェアと同様に5年で償却を行います。

経営財務No3335によると、

クラウドサービスの内容や利用実態に応じて会計処理を検討することが必要で、ソフトウェアの使用期限が定められていない場合等において,実質的に購入しているのと変わらないと判断される場合などは,ソフトウェアを資産計上して一定期間(原則5年以内)にわたり償却することも考えられる

と記載あり。

また、自社でサーバなどの基礎的な土台となる環境(インフラ)を持たなくとも,インターネット経由で当該環境を利用することが可能なサービス(IaaSと呼ばれる)の場合などは,契約内容や利用実態によってファイナンス・リースの要件に当てはまり、費用処理ではなく資産計上が必要となる可能性が出てくる場合もあるという とのことです。

うい(筆者)

曖昧な書きっぷりです。基準を作ってはっきりさせてほしいですね。

クラウドの税務処理

さて、続いて税務の取り扱いですが、利用料は支払額をそのまま損金処理で問題ありません。

こちらも悩ましいのは、初期費用、カスタマイズのコストの取り扱いですね。

結論いいますと、クラウドの初期費用、カスタマイズ費用についても会計同様、5年間に渡り償却します。

税務通信No.3588に、「クラウド導入に伴うカスタマイズ費用は繰延資産」 という記事があり、支出の効果が及ぶ期間は5年が妥当と記載があります。

この考えのもとには、 法人税基本通達8-2-3(繰延資産の償却期間)の「建物を賃借するために支出する権利金等」(3)で、契約による賃借期間が5年未満である場合において、契約の更新に際して再び権利金等の支払いを要することが明らかであるときはその賃貸借期間とし、更新の際に権利金等の支払いが発生しない場合は5年で償却すればよいとされていること があげられています。

会計上「無形固定資産」として計上しているケースも考えられる、

このような認識におけるカスタマイズ費用については,「他の者から購入したソフトウエアについて,

そのソフトウエアの導入に当たって必要とされる設定作業及び自社の仕様に合わせるために行う付随的な修正作業等の費用の額」に該当するため,

ソフトウエアの取得価額に算入し,耐用年数「5年」で償却することになる とも記載あり、

税務上の繰延資産だろうが、ソフトウェアだろうが5年で償却しておけば基本的に大丈夫そうです。

但し、クラウドの使用可能期間を契約で縛っている場合は、その期間で償却しましょう。

使用期間10年と契約書に明記してある場合は、支出の効果が及ぶ期間は10年と客観的に考えられますよね。5年でも大丈夫そうですが、契約書記載の期間で処理する方が税務リスクは低いと思います。

(自己の製作に係るソフトウエアの取得価額等)

7-3-15の2 自己の製作に係るソフトウエアの取得価額については、令第54条第1項第2号の規定に基づき、当該ソフトウエアの製作のために要した原材料費、労務費及び経費の額並びに当該ソフトウエアを事業の用に供するために直接要した費用の額の合計額となることに留意する。

この場合、その取得価額については適正な原価計算に基づき算定することとなるのであるが、法人が、原価の集計、配賦等につき、合理的であると認められる方法により継続して計算している場合には、これを認めるものとする。(平12年課法2-19「八」により追加)

(注) 他の者から購入したソフトウエアについて、そのソフトウエアの導入に当たって必要とされる設定作業及び自社の仕様に合わせるために行う付随的な修正作業等の費用の額は、当該ソフトウエアの取得価額に算入することに留意する。

国税庁HPより

初期費用と利用料が区分できるもの・できないもの

クラウド初期費用の金額について、会社によっては初期費用に関する記載がなく、契約期間中における利用料のみ記載されていることもあります。

税務通信No.3585によると、

こうした場合クラウドサービス提供側から利用料の内訳を記した書類等の提示を受け,

初期費用相当額と利用料が明確に区分できるときは,初期費用相当額を繰延資産として処理することになるそうです。

また、区分されていない場合にはすべてを利用料と損金参入が認められるようですが、税務リスクを考慮すると区分してもらうよう依頼して、資産計上すべきものはしっかりした方がいいと考えられます。と記載があります。

うい(筆者)

ここもはっきりしない書きっぷりです。区分できないから全額損金!ってのは、ちょっと恐くて私はできないですね。

まとめ

  • クラウドはIaaS・PaaS・SaaSの3つの種類がある
  • クラウドサービスの利用料 → 会計・税務ともに、支払手数料等で費用・損金。
  • クラウド初期費用 → 会計・税務ともに、資産計上し5年償却(利用可能期間がある場合は税務上はその期間で償却)

ぼんやりとしていて実態がよくわからないクラウドだからか、

その経理処理もなんだかぼんやりとしていてはっきりしませんね。

クラウド専用の会計基準ができるまでは、ソフトウェアに準じた経理処理をするのがベターのようです。

実務の際は顧問税理士や会計監査人と協議の上、経理処理を進めましょう。

最後までご覧いただき有難うございます。皆様の参考になれば嬉しいです。

この記事を書いた人

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●経理歴15年●商社勤務
●資格:簿記論、財務諸表論、簿記1級、AFP、TOEIC750、ビジ法2級

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