社員の健康管理は会社の責任
2008年施行の労働契約法で、「企業は従業員に対して生命や身体の安全を確保しながら働けるように配慮する義務がある」ということが明文化されました。
会社が従業員が安全で健康に働くことのできる環境を用意しなくてはいけないことを「安全配慮義務」と言います。
健康診断費用の経理処理
従業員の健康診断実施は、会社の義務となっていることを皆さんご存知でしょうか。
適切に健康診断を実施しないことで、企業が労働安全衛生法違反の罪に問われる可能性があります。
健康診断は法律的に義務となっており、労働安全衛生法第44条に実施義務が制定されています。
労働安全衛生法違反の場合は50万円以下の罰金刑があります。
健康診断費用は経費として計上可能です。一部の者に限定するものではなく、全従業員に対して健康診断を行う場合に、福利厚生費として経費で計上することができます。
但し、通常必要であると認められる常識の範囲内の内容ではない場合や、健康診断の費用を会社が実施する病院などに直接支払を行っていない場合は、福利厚生費で計上できませんので注意です。
●健康診断費用を福利厚生費処理するための3条件
・全従業員を対象としていること
・必要であると認められる常識の範囲内の内容であること
・費用を会社が直接支払っていること
【仕訳】
福利厚生費 (課税仕入) / 現預金
人間ドック費用の経理処理
昨今、従業員の健康管理の補助のため、一定の年齢の従業員に対し人間ドックを福利厚生で提供する会社も増えてきました。人間ドックの経理処理ですが、基本的には健康診断と同様です。
●人間ドック費用を福利厚生費処理するための3条件
・全従業員を対象としていること
・必要であると認められる常識の範囲内の内容であること
・費用を会社が直接支払っていること
【仕訳】
福利厚生費 (課税仕入) / 現預金
なお、国税庁のホームページに下記のように記載があります
国税庁HP
人間ドックの費用負担
【照会要旨】
A社では、社内規程を設け、役員及び使用人の健康管理の目的で、全員について春秋2回定期的に健康診断を実施しているほか、成人病の予防のため、年齢35歳以上の希望者の全てについて2日間の人間ドックによる検診を実施しています。この検診は、会社と契約した特定の専門医療機関においてベッド数が確保できる範囲内で順次実施し、その検診料を会社で負担することとしていますが、この人間ドックによる検診を受けた人に対して、会社が負担した検診料相当額を給与等として課税すべきですか。
【回答要旨】
給与等として課税する必要はありません。
役員や特定の地位にある人だけを対象としてその費用を負担するような場合には課税の問題が生じますが、役員又は使用人の健康管理の必要から、雇用主に対し、一般的に実施されている人間ドック程度の健康診断の実施が義務付けられていることなどから、一定年齢以上の希望者は全て検診を受けることができ、かつ、検診を受けた者の全てを対象としてその費用を負担する場合には、給与等として課税する必要はありません。
【関係法令通達】
所得税基本通達36-29
ストレスチェック費用の経理処理
労働安全衛生法の一部改正を受け、2015年12月1日にストレスチェック制度が施行され、 労働者が50人以上いる事業所では年1回のストレスチェックが義務となりました。
労働環境を改善し、ストレスに起因する鬱病などの精神疾患や過労死などの予防が、ストレスチェックの目的です。
【仕訳】
福利厚生費 (課税仕入) / 現預金
助成金の経理処理
健康診断、人間ドックは、一定の要件を満たすものについて、申請を行うと助成金が出るものもあるので、忘れずに健保組合に確認しましょう。総務部などが手続きを行っている場合は、漏れがないよう注意を促しましょう。
【仕訳】
現預金 / 雑収入(課税対象外・不課税)
法制度を正しく理解して経理処理しましょう
健康診断等の費用は要件を満たせば福利厚生費として計上可能です。
助成金の手続きは漏れがちなので、総務部や健保組合に確認し忘れないよう注意です。
※経理処理は顧問税理士や会計監査人に相談し慎重に行いましょう。