この記事でわかること
- 取引信用保険の内容
- 取引信用保険を掛ける理由
- 取引信用保険の会計処理・税務取扱い
取引信用保険とは
企業の全取引先を対象に包括的に保険契約を締結することが一般的となっており、国内向け、海外向け毎に分かれていること多いです。
なぜ売掛債権に保険を掛けるのか
企業のBSの資産額のうち、約30~40%程が売掛債権といわれています。
現金商売をしている業種以外は、常に貸倒のリスクを抱えていることになります。
倒産等で支払不能となる取引先を予測することは基本的に不可能となります。
そもそも倒産しそうでしたら取引しませんよね。
また、支払不能に陥る企業の約半数は、長期的な取引実績があり、良好な関係を構築していた取引先から発生しています。
万が一債権が回収できなくなれば、企業活動に致命的な影響を及ぼす可能性はゼロではありません。
利益率が10%の事業をしているとして、100万円の貸倒が発生した場合、この損失を取り返すためには1,000万円の売上が必要となります。
貸倒対応に手間、時間を取られるため、人的リソースも考慮した場合、実質的な損失は債権額以上になり、円滑な営業活動を妨げる要因となります。
どの企業においても貸倒れリスクに対し、対策を講じることが必要なり、取引信用保険はリスク対策の一つの手段ということです。
私はとある商社に勤めていますが、信用保険は義務となっております。
当然保険料もかなりの金額となっていますが、売掛債権回収不能を回避できる必需品、安心して営業活動するための必要経費だと思います。
所有する不動産や商品等の有形資産には保険を掛けるのが一般的ですが、BSに占める金額が一番大きい売掛債権にこそ保険を掛けるべきかなと思います。
信用保険料の会計処理
信用保険だけではなく、一般的に保険料は前払で年間払いのものが多く見受けられます。
なお、基本的に年払いの方が金利の関係で安く済みます。
保険料支払のタイミングは契約によるのですべての信用保険が同じ処理方法とは限りませんが、私の経験上、最も出くわす頻度が高いパターンの経理処理方法について下記いたします。
●予想保険料:1,000
売上高見込み(100,000)に基づき保険契約開始時に計算されます。※保険料率は1%とする
●前払保険料(最低保険料):800
保険契約開始時に支払う前払保険料で、最低保険料と同額のことが多いです
●確定保険料:1,200
売上高実績(120,000)に基づく保険料
●無事故割引:300
確定保険料1,200×25% ※無事故割引率は25%とする
●精算保険料:100
確定保険料1,200-前払保険料800-無事故割引300
保険料支払い時
保険料支払時点では役務提供を受けていないので前払費用で計上します。
前払費用 800 / CASH 800
期中月次処理
前払費用を取り崩すとともに、年間予想保険料に足りない分を未払費用で計上します
保険料 83.3 ※1,000÷12 / 前払費用 66.6 ※800÷12
未払費用 16.7(差引)
保険料 1,000
前払費用 0
未払費用 200
精算時
未払費用 200 / CASH 100
保険料 100
無事故割引適用したため、確定保険料が予想保険料を下回りましたので、未払費用を取り崩して支払うとともに保険料のマイナスを計上します。
無事故割引適用後、確定保険料が前払保険料800を下回ることになった場合は、精算額0となることが一般的です。
※最低保険料というのはこのことを意味しており、前払保険料がかえってくることは一般的に少ないです。
信用保険の税務
信用保険料は損金算入可能であり消費税区分は非課税です。
貸倒引当金と違い、損金算入が可能となりますので、税コストを減らすことができます。
万が一貸倒が発生し保険金が入金した場合は、不課税として処理します。
No.6157 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例
[令和3年4月1日現在法令等]
国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡や貸付け、役務の提供(以下「資産の譲渡等」といいます。)は、消費税の課税の対象となります。したがって、国外で行われる取引や、次のような取引は課税の対象となりません。
省略
(4) 保険金や共済金・・・・資産の譲渡等の対価といえないからです。
省略
国税庁HPより引用
まとめ
信用保険料の経理処理について、ご説明しました。
期中の仕訳で、前払費用を取り崩しつつ未払費用を計上するというのが取引信用保険料の経理処理の特徴というか、わかりにくいところだと思います。ぱっと見でなんだか違和感がありますよね。
私の会社では上記の経理処理方法でやっていますが、実務の際は自社の顧問税理士さんや会計監査人に相談の上、慎重に処理を行いましょう。