為替ポジションとは
外国為替取引によって生じた外貨建て債権・債務の残高は、為替ポジションと呼ばれます。
保有している外貨建ての債権が債務より多い場合は、外貨の買持ちポジション(ロングポジション)を持っているといいます。この状態では、自国通貨高に振れると損失、自国通貨安にふれると利益になります。逆に、保有している外貨建ての債務が債権より多い場合は、外貨の売持ちポジション(ショートポジション)を持っているといいます。この状態では、自国通貨安に振れると損失になり、自国通貨高に振れると利益になります。
外貨建ての債権と債務がバランスして、外貨の買持ちポジションでも売持ちポジションでもなくなる状況は、「スクエアー」であるといいます。スクエアーとは英語で貸借の偏りのない状態を指します。
日本において外貨の買持ちポジションが無くなってスクエアーになる例としては、輸出企業が外貨建ての輸出代金を受け取り、これを銀行で円に交換した場合や、企業が外貨預金を円転した場合、顧客から外貨を買った銀行が銀行間市場で反対売買をした場合などが挙げられます。
一方、日本において外貨の売持ちポジションが無くなってスクエアーになる例としては、輸入企業が円を外貨に交換して外貨建ての輸入代金を支払った場合や、企業が外貨建て借入れを返済した場合、顧客に外貨を売った銀行が銀行間市場で反対売買をした場合などが挙げられます。
公益財団法人国際通貨研究所より
買持(ロング) → 外貨建ての預金、債権、売の契約残高(B/Sでいうと借方に属するもの)を持っている状態
売持(ショート) → 外貨建ての債務、買成約(B/Sでいうと貸方に属するもの)を持っている状態
実務上この持ち高を全く同じにすることは困難ですので、買持・売持の限度額を設け為替リスクをできるだけ回避するよう管理を行っている会社が多いです。
なぜ為替ポジション管理を行う必要があるのか
リスクマネジメントの一種ということになりますね。ポジションはリスクとほぼ同義と捉えてOKです。
売掛金が100万ドル持っていると仮定します。計上レートは1$=100円とします。計上時の円換算額は、100万ドル×100で1億円です。その後1$=110円になると、100万ドル×110で1億1千万円となり、1$=90円になると、100万ドル×90で9千万円となります。
為替相場は常に動いていますので、外貨建ての売掛金というのは価値が常に変動していることなります。この売掛金が発生した商売による利益が500万円だと仮定すると、為替の変動により利益が全く無くなってしまうということが起こり得るということです。
売掛金100万ドルの他、買掛金100万ドルを持っていたとするとどうでしょうか。
買掛金は売掛金と逆の換算の動きをしますので、いくら為替相場が変動しても互いに打ち消しあい、為替の換算損益は全く出ないことになります。
このように買持(売掛金等)と売持(買掛金等)が完全に一致している状態をスクエアーといい、この状態を目指せば為替変動の影響を完全に排除することができます。この状態がリスク回避するうえでは理想の状態となります。
為替ポジションのコントロール
しかし、どうでしょう。FXのように好きなタイミングで外貨を買ったり売ったりできればスクエアーにできるかもしれませんが、債権債務は営業活動の結果、仕入売上に応じ発生するものですので、完全にコントロールするのは不可能です。
為替リスクの回避のために、実務上は為替予約という手段を用います。為替予約により将来のレートが確定するので、為替リスクから解放され、為替ポジション管理をする必要が無くなります。
すべての外貨建ての債権債務に為替予約をとれば為替リスクはなくなるのですが、為替予約には手数料が掛かるので利益が減ってしまいます。
そのため、外貨の銀行口座を開設し運用している会社もあります。外貨で買って外貨で売る取引の場合、円を外貨に換えて支払うのではなく外貨口座から送金し、入金も外貨で行うという方法です。
この場合、ポジション(=リスク)は、利益相当分だけとなりますので利益相当分について為替予約をとればポジションを解消することができます。
為替予約はその対象金額の大きさに応じ手数料金額が変わりますので、債権債務全額に対し為替予約をとるのに比べ少ない費用でリスクを回避できる ということです。
自社に適した方法で為替ポジション管理を行いましょう
そもそも外貨取引が少なければ、為替リスクも少ないので為替予約をとる必要もあまりないですし、外貨口座を開設する必要もありません。
為替ポジション管理は重要ですが、管理にかかる労力とリターンを天秤にかけて最適な方法で行いましょう。