この記事の内容
- 輸入取引の仕訳、計上日
- 輸入取引の流れ
- 輸入取引の消費税の取扱い
輸入取引について
輸入取引とは、外国から商品を仕入れ、日本の会社に販売する取引です。
経理処理を説明する前に、輸入の流れをざっくりとおさえましょう。
①売主(輸出者)との間で売買契約を締結
②外貨決済の場合は、為替予約を締結する
③必要に応じ保険の手続き等を行う
④船積書類の入手・商品代金の支払い
⑤輸入通関手続き、貨物の引き取り
⑥指定納入先へ輸送
手数が多いですが通常は物流会社、通関業者等にお任せするので、そんなに煩わしいことはありません。
輸入取引の経理処理
①在庫取引
輸入した商品を一旦倉庫に入れてから販売する形式を、「在庫取引」といいます。
a. 商品を倉庫へ入庫
商品 / 買掛金
仮払消費税 /
なお、倉庫に入庫するために掛かった費用(諸掛)は商品の金額に乗せるのが一般的です。
b. 倉庫から出庫し販売した
売上原価 / 商品
売掛金 / 売上
/ 仮受消費税
②直送取引
輸入した商品 を倉庫に入れずそのまま販売する形式を直送取引といいます。
売上原価 / 買掛金
仮払消費税 /
売掛金 / 売上
/ 仮受消費税
在庫取引のa,bが同時に起こる仕訳となります。
輸入取引の計上日について
実務で使われている一般的な計上日を上のパターンに合わせてみていきます。
① 在庫取引
a. 商品を輸入し、国内の倉庫へ入庫
輸入通関日またはB/L入手日、倉庫入庫日、検収完了日等が計上日となります。
私の会社は輸入通関日で計上しております。
他商社も輸入通関日での計上が多く見受けられます(個人的な調べ)
B/Lは有価証券であり、貨物の引換券ですので入手日というのも理にかなってますね。
この辺りは会社毎の取引実態に合わせ決めているようです。
いずれにせよ、選択した計上日基準を毎期継続して行うことが必須となります。
b. 倉庫から出庫し販売した
倉庫出庫日または販売先納入日で計上するのが一般的です。
これは直感的に理解しやすいと思います。こちらも選択した計上日基準を毎期継続する必要があります。
②直送取引
輸入通関日、販売先納入日で計上するのが一般的 です。
売上も輸入通関日でやっちゃっていいの?という疑問が生じますよね。実際やっちゃってます。
計上日って経理上とても大事なものなので、経理規程で定めることが一般的です。
というのも計上日が前後すると決算額に影響があるためです。
輸入通関後、そのまま販売先へと商品が運ばれていくわけですが、
通常は通関完了したのち、数日で買主へ出荷されることが殆どですので、
大体の場合は同じ月の中で収まることになります。
厳密にやるとしたら、輸入通関日に仕入計上したのち、
販売先に納入した日に売上計上するのかと思いますが、そのタイムラグが数日であればよかろうってことだと思います。
初めて知ったときは違和感がありましたが、一日1万件とかの膨大な取引件数を目の当たりにすると、致し方ないかなと思います。
但し、決算期においては、次のような取り決めとなっていることが一般的です。
3月決算の会社で、3/25に輸入通関完了後、直送で販売先へ納入する手続きを進めた。
しかし、港の混雑等の影響により保税地域からの出荷は4/3となり、販売先納入日は4/5であった。
なお、3/31時点では保税地域に商品は置いてあった。
この場合、輸入通関日は3/25ですので通常月であれば、3/25に仕入売上が計上されることになります。
しかし、3/31時点ではまだ保税地域に商品があり販売先に出荷されていません。
会計処理は取引を正確に記録することが目的ですので、仕入の事実を記録するため、決算期においては仕入のみ計上することとなります。
通関は完了しているものの、まだ保税地域にありますから販売したとは言えないですよね。
仕入先に対しては債務を認識する必要がありますので、買掛金を計上します。
商品 / 買掛金
仮払消費税 /
毎月この処理をやった方がいいと考えられますが、大量に取引があることから毎月実施するのは実務上の負荷が相当掛かり現実的ではないことから、決算期以外はやっていません。
この分販売先の計上額と月ズレすることとなり、決算月以外の残高確認書では相違が発生します。
この場合は、残確の摘要欄に、「弊社○月計上のため」等の文言を記載することとなります。
輸入取引の消費税について
輸入取引についても消費税が掛かります。しかし、国内取引の消費税とはちょっと取扱が異なります。
輸入取引の消費税は、貨物を引き取る際に輸入者が税関に納付します。
税率等は国内取引と同一ですが、税関に納付するというのが輸入取引の消費税の特徴です。
なお、消費税納付の際に合わせて関税も支払います。この関税は商品代金に乗せることが一般的です。(租税公課で計上している会社もあります)
関税と消費税は計上が異なりますので要注意です。
輸入の処理は通関業者に委託する場合が殆どだと思いますが、通関業者に委託した者が輸入者となり消費税の納税義務者になりますので、通関業者に支払っている場合でも消費税の対応は必要となります。
【国税庁HPより抜粋】
No.6133 輸入する貨物の納税義務者
[令和3年4月1日現在法令等]
輸入する貨物については、その貨物を保税地域から引き取る時に消費税が課税されます。
輸入する貨物についての消費税の納税義務者は、その貨物を保税地域から引き取る者です。この貨物を保税地域から引き取る者とは、輸入申告者のことです。
したがって、通関業務を他に委託して輸入貨物を引き取る場合の納税義務者は、その通関業者ではなく、通関業務を委託した者となります。
輸入取引の場合の納税義務者は、国内取引の場合のように事業者に限定されず、また、免税点などの規定も設けられていません。
したがって、事業者だけでなく給与所得者や家庭の主婦なども、外国貨物を輸入すれば消費税の納税義務者となります。
また、輸入とは、外国から我が国に到着した貨物又は輸出の許可を受けた貨物を我が国に引き取ることをいいます。
したがって、一般的な貿易により輸入される貨物のほか、海外旅行からの帰国の際におみやげなどとして持ち帰ったものも課税の対象になります。
ただし、海外旅行から帰国したときに課税される輸入関税がいわゆる携帯品免税として免除されるものについては、消費税も免除になります。
なお、輸入する貨物についても地方消費税が課税されますから、保税地域から引き取る場合には、消費税と併せて地方消費税も税関長に納付する必要があります。
国税庁HP
最後に
輸入取引の経理処理方法について説明しました。
はじめはややこしいと思いますが、手続きの流れをおさえて取引の内容を理解すれば特別難しくはありません。
輸入通関、消費税の取扱がポイントとなるので、経理担当者としてはここを重点的におさえておきたい所です。