ソフトウェア仮勘定とは
制作途中のソフトウェアに関する支出額は、完成するまではソフトウェア仮勘定で計上します。
制作途中のソフトウェアの計上科目について制作途中のソフトウェアの制作費については、無形固定資産の仮勘定として計上することとする。
研究開発費等に係る会計基準注解
要は建設仮勘定のソフトウェア版ですね。
例:ソフトウェア制作費用を100万円支払った。(この時点では未完成)
ソフトウェア仮勘定 100万円 / 現預金 100万円
なお、未完成の支出を仮に計上している勘定ですので、減価償却をする必要はありません。
制作が終わり、事業の用に供することができるようになった時点で、「ソフトウェア」勘定に振り替えます。
ソフトウェア 100万円 / ソフトウェア仮勘定 100万円
ソフトウェア仮勘定も減損の検討対象になるのか
ソフトウェアとして資産計上をする以上は固定資産の減損の検討対象には入ってきますので、
減損の兆候の検討は必要となります。
システム制作の中止については、その理由次第では減損の兆候そのものにもなり得る事象となります。
そもそもソフトウェア仮勘定として計上できるのかも留意すべき
一方、減損について考える以前にまずこのそのソフトウェア制作に関する支出は
本当に資産計上していいものなのか?をはじめに検討しておくことが必要です。
そもそもの資産計上可能な範囲のコンセプトが、
「そのソフトウェアの利用により将来の収益獲得又は費用削減が確実であることが認められる」かどうか
という点にあります。
支出がそれに資産計上の要件を満たす支出なのかどうかの実態判断を慎重に行う必要があると考えられます。
システム開発の事前調査費用など、
いわゆるフィージビリティスタディの性質をもつ支出であるとみなされると
そもそも固定資産に計上することができません。
減損の判定という論点に合わせ、フィージビリティスタディ段階の支出で資産計上すべきものかどうなのか、
慎重に判断する必要があることを認識しておきましょう。
(以下研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針より抜粋)
資産計上することとなる自社利用のソフトウェアの取扱い11.自社利用のソフトウェアの資産計上の検討に際しては、そのソフトウェアの利用により将来の収益獲得又は費用削減が確実であることが認められるという要件が満たされているか否かを判断する必要がある。
その結果、将来の収益獲得又は費用削減が確実と認められる場合は無形固定資産に計上し、確実であると認められない場合又は確実であるかどうか不明な場合には、費用処理する。
ソフトウェアが資産計上される場合の一般的な例を示すと以下のとおりである。① 通信ソフトウェア又は第三者への業務処理サービスの提供に用いるソフトウェア等を利用することにより、会社(ソフトウェアを利用した情報処理サービスの提供者)が、契約に基づいて情報等の提供を行い、受益者からその対価を得ることとなる場合
② 自社で利用するためにソフトウェアを制作し、当初意図した使途に継続して利用することにより、当該ソフトウェアを利用する前と比較して会社(ソフトウェアの利用者)の業務を効率的又は効果的に遂行することができると明確に認められる場合
例えば、当該ソフトウェアを利用することにより、利用する前と比べ間接人員の削減による人件費の削減効果が確実に見込まれる場合、複数業務を統合するシステムを採用することにより入力業務等の効率化が図れる場合、従来なかったデータベース・ネットワークを構築することにより今後の業務を効率的又は効果的に行える場合等が考えられ、ソフトウェア制作の意思決定の段階から制作の意図・効果が明確になっている場合である。
③ 市場で販売しているソフトウェアを購入し、かつ、予定した使途に継続して利用することによって、会社(ソフトウェアの利用者)の業務を効率的又は効果的に遂行することができると認められる場合
会計制度委員会報告第12号
研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針
私の経験上、関係会社の決算にて、計上済のソフトウェア仮勘定について、
フィージビリティスタディ段階の支出であることをCPAに指摘され全額取り崩し(研究開発費に振替)をしたことがあります。
開発案件の支出は一般的に金額が大きくなりがちです。
万が一資産計上を認められない場合に決算に多大なインパクトを与えるため要注意です。
まとめ
●ソフトウェア仮勘定とは、制作途中のソフトウェアに関する支出額を完成するまで仮置きする勘定科目
●ソフトウェア仮勘定も減損の検討対象になる
●そもそもソフトウェア仮勘定として計上していいのかも留意すべき
※システム開発の事前調査など、フィージビリティスタディの性質の支出はそもそも固定資産に計上できず、費用処理となります。